法人節税対策まとめ|営業マンなら最低限知っておきたい税務知識

法人節税対策まとめ|営業マンが最低限知っておくべき基礎知識

今回は法人営業をしているのなら最低限このくらいは知っておきたい法人の節税対策をご紹介します。もちろん、このページをお読みの方々は勉強熱心な方が多いので既知の内容もあるでしょう。それでも情報提供の素材(メルマガ・ニュースレター等)として使える内容もあるかと思います。

よろしくお付き合いください。

インデックス



1. 本年度の税制措置を活用する

まずは本年度の税制措置について知っておく必要があります。節税対策は「情報戦」の側面があり、税制措置には国の政策を反映した時限的なものが多分にあるからです。例えば、平成29年度は生産性向上のための設備投資や従業員の給与アップを行うと減税につながる制度があります。なので、「そうした時限的な税制措置の中で使えるケースはないですか?」と情報提供と併せて経営者に確認してもらいます。

そこで、「お!これは使える」という節税策があれば経営者に喜んでもらえますよね。

平成29年度税制改正に関する中小企業向けパンフレット

では、そんな時限的な税制措置をどうやって知ればいいのか?
実は中小企業庁では中小企業・小規模事業者向けに毎年その年度の税制改正の概要を解説したパンフレットを作成しています。誰でも簡単にダウンロードできますので、ご存知なかった方は以下にて入手されてください。

 平成29年度税制改正に関する中小企業向けパンフレット

そのうえで本題です。

今期の利益が上がりすぎた場合はどうしたらいいのか?
これはすなわち、「決算対策」です。具体的には法人節税ということになりますが、対策方法は大きく2つです。ひとつは【恒久型節税】、もうひとつは【利益繰り延べ型節税】です。

2. 恒久型の節税対策

恒久型節税とはその効果が恒久的に続く本質的な節税です。ここでは4つのアイデアをご紹介します。いずれも実現ハードルの低いにもかかわらず、それなりに節税効果を生み出せる対策ばかりです。その気になれば当月中に対策を打てますから、決算期まで時間的な余裕があれば今期の節税にも間に合いますし、もちろん、来期以降も恒久的に節税を図れます。

以下、それぞれの効果ついて簡単に解説を加えましょう。

2-1. 事業の分社化

例えば弊社では「経営コンサルティング事業」「営業支援事業」「WEB サービス事業」「コンテンツ商品の企画開発及び販売事業」「講演・研修事業」「不動産サービス事業」など、複数事業をやっています。

これらの事業を全部1社でやってもいいのですが、当然そうなると全売上が1社に集中してしまいます。そこで、弊社では「コンテンツ商品の企画開発及び販売事業」「講演・研修事業」の2つの事業を切り離して新会社を設立し分社化してしまいます。

すると、どういうメリットがあるのか?

2-1-1. 消費税の節税メリット

まず節税の観点からいうと、分社化し2つの事業の売上を新会社に移転することで消費税の節税が図れます。新設会社では資本金1千万円以下なら2年間は消費税非課税の恩典が受けられますので、2つの事業の売上全額が当面(2年間)は非課税になるわけです。設立2年経過後も前々年の売上が1千万以下であれば非課税事業者となります。消費税増税が間近に迫る今、これはかなりの節税メリットでしょう。

2-1-2. 法人税の節税メリット

次に、法人税の節税です。法人税の税率は資本金1億円以下の法人では法人所得金額800万円以下の部分については低い税率が適用されています。つまり、所得金額が低いほど低い税率が適用されているわけです。これにより子会社を設立して会社の利益を分散させることで、軽減税率の恩恵を受けることができるのです。

2-1-3. 役員退職金を2社からもらえるメリット

さらに、これは副次的なメリットにもなりますが、法人が2社あれば2社から役員退職金を受け取ることが可能です。よって、経営者が法人から個人への資金移転を図る際に「退職所得」という大きな税制上の恩典をダブルで享受することも可能です。

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法人設立は2週間あれば完了します。資本金の制限(1円でもOK)もないわけですから、分社化による節税効果と法人維持コストを天秤にかけて、節税効果が大きく上回るなら有効な節税対策といえるでしょう。

2-2. 旅費規程の作成・運用

「旅費規程」を作ることで節税につながります。多くの中小企業が「旅費規程」を作っておらず、旅費に関しては実費精算をしています。出張に対して実費以上の「旅費」を支払うという発想がないからです。ところが、「旅費規程」を作ることは会社と社長に次の2つの経済メリットをもたらします。

2-2-1. 数万円単位の出張手当(日当)を社長個人に非課税で資金移転できる

例えば年間50日出張する社長がいたとして、旅費規程上の出張日当が1日2万円だとします。すると、「50日×2万円=100万円」が完全非課税で社長のポケットマネーとして受け取れるというわけです。(もちろん、ここで受け取った金額には社会保険料もかかりません) ちなみに、旅費に関しても実費精算は求められませんので、新幹線の格安チケット購入などで実費との「差額」をポケットマネーとすることも可能です。

2-2-2. 会社の法人税(消費税含む)を減らすことができる

さらに、上記の出張日当(100万円)は「旅費規程」を作ることで経費化できますので、課税所得を圧縮して法人税額の軽減につながります。そのうえ、消費税課税事業者は上記の出張日当(100万円)が課税仕入の対象になりますので、消費税軽減効果(100万円×8%=8万円)もあるわけです。

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2-3. 住宅借り上げ制度の運用

ご存知でしょうが、「住宅の借り上げ制度」も大きな節税につながります。「住宅の借り上げ制度」とは役員や社員が済む住宅を会社が借り上げ、社宅として役員や社員に貸すことで、その家賃の大部分を「福利厚生費(経費)」として計上するというものです。

例えば、家賃10万円のマンションを借りているとして、そのマンションを会社が借り上げて役員や社員に貸したとします。その家賃の割合が会社負担70%(家賃7万円)、役員や社員の個人負担30%(家賃3万円)とすると、会社は年間合計84万円の経費を計上できることになります。

一方、役員や社員にしても会社負担70%(家賃7万円)は「非課税手当」のようなものです。年間84万円を報酬(給料)として受け取れば、そこには税金・社会保険料の洗礼が待っているからです。高額所得者なら半分(約40万円)は国に持っていかれてしまいます。

そう考えると、これまで「面倒くさい」という理由だけで「住宅の借り上げ制度」を導入していなかったのだとすると、十分検討する余地があるのではないでしょうか。ちなみに、弊社も「住宅の借り上げ制度」を大いに活用しています。

 会社のカネで家を買う

住宅の借り上げ制度の大技です。オーナー社長なら「会社のカネで家を買う」という方法もあります。要は会社が家を買って、オーナー社長に貸すというロジックです。たまに個人名義で資産を所有していないと不安というオーナー社長もいますが、僕としては法人名義で家を買って、それを社宅として自分で借りる方(住宅借り上げ制度)が税務上のメリットは大きいと考えています。

例えば個人名義で家を買った場合は「住宅借入金等特別控除」は各年の控除額が最大40万円なので、10年間の最大控除額でも400万円だけです。(住宅借入金等特別控除を利用した場合) そのうえ購入資金は税金・社会保険料の洗礼を受けた後のお金を充当することになります。

一方、法人名義で家を買った場合は建物の耐用年数に応じて減価償却(損金計上)できるうえ、登記費用や不動産取得税が全額損金となるほか、毎年のコスト(ローン返済金利・固定資産税・火災保険料・修繕費等)も全額損金にできるからです。(※僕も会社のカネで家を買っています)

2-4. 雇用促進税制

雇用促進税制」とは人を雇えば「税額控除」が受けられる制度です。中小企業では雇用者数を2名以上増やし、一定の要件を満たすと適用になります。「税額控除」ですから適用になると節税効果はかなり大きくなります。具体的には雇用者増加1人につき「40万円」の「税額控除」が受けられますので、2名増加していればそれだけで「80万円」の税額控除になるわけです。

「雇用促進税制」を受けるためには「人を雇う」ことが必要ですが、それは「正社員」である必要はありません。「雇用保険の被保険者」ならOKです。つまり、パート社員の雇用でもOKということです。

 雇用促進税制(厚生労働省HP

「雇用促進税制」の注意点としては決算直前になって“今期は利益が出そうだから「雇用促進税制」を受けたい”と言っても手遅れだということです。というのも、「雇用促進税制」を受けようとする場合にはハローワークに2回手続きが必要になるからです。

1回目は事業年度が始まってから2ヶ月以内で、まずは「雇用促進計画」というものをハローワークに提出します。2回目は事業年度が終わってからで、これは実際に従業員が増えたのかどうかの確認のための手続きになります。

従って、「人を増やす予定があり、かつ今期は利益が出そう」なら、とりあえず「雇用促進計画」をハローワークに提出しておくことがポイントです。

3. 利益繰り延べ型の節税対策

利益繰り延べ型節税は今期課税を翌期以降に振り替えるなどの緊急回避的な節税になります。例えば、前払い費用や生命保険の活用などで当期利益を繰り延べるわけです。

以下、それぞれの効果ついて解説を加えます。

3-1. 前払費用の検討

経費勘定の中には1年分前払いしても、経費として認められるものがあります。「地代家賃」「火災保険料」「借入金利息」「信用保証料」「ロイヤリティ」「リース料」「月払い会費」「WEBサーバー利用料」「看板広告」などがそうです。これらは税務上、「短期前払い費用」として当期の費用に取り込めますので、課税繰り延べ効果があります。

 DL保存版|決算月の会社の社長に渡すと喜ばれるお役立ち営業ツール

 短期前払費用とは?

支払った日から1年以内に提供を受ける役務の提供に係るものとされています。後は来期も事業を継続する中で必要コストとして予見されるものを、今期に前倒しで支払ってしまうという手もあります。代金を先払いして喜ばない事業者はいませんので、支払う相手はフレキシブルに対応してくれます。ただし、そこら辺は微妙なサジ加減も必要でしょうから、顧問税理士と相談のうえで「OK」「NG」の判定をしてもらうのがよいでしょう。

3-2. 経営セーフティ共済の加入

社長が意外と知らないのが「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)」です。やはり経営セーフティ共済は効果的な節税方法です。期末ギリギリでも240万円の利益を一気に圧縮することが可能だからです。

「経営セーフティ共済」は国が全額出資している独立行政法人「中小企業基盤整備機構」が運営している官製の共済制度です。掛金は「全額損金計上」できて、40ヶ月以上加入していればいつでも全額戻って来ます。年間拠出掛金の限度額は240万円、積立限度額は総額800万円まで。

つまり、総額800万円までは含み資産として蓄積できるわけです。

民間の保険商品と比べるとコストパフォーマンスは群を抜いていますし、逓増定期保険のように一定期間が経過すると逆に返戻率が下がることもありませんので、資金需要がなければそのまま含み資産にしておくことも可能です。おまけに加入手続きも書類を提出するだけと簡単です。

なので、民間の生命保険で節税を考える前に、まずは「経営セーフティ共済」に加入するのがセオリーでしょう。(※弊社も満額加入しています)

 経営セーフティ共済(中小機構HP)

3-3. 生命保険の活用

最後に生命保険の活用です。ご存知のとおり、保険商品の中には加入後一定期間を経過すると、支払保険料とほぼ同額の解約返戻金が積立てられるものがあります。さらに、保険商品によっては支払保険料を損金計上できるものがあります。ゆえに、“節税を図りながら簿外資産を形成できる”というメリットが生まれることになります。これが他の金融商品(現金積立等)では実現できない生命保険の固有メリットです。

さて、「節税」という観点で生命保険の活用を考えたとき、その活用法は概ね次の3つでしょう。

3-3-1. 利益繰り延べの節税商品として

純粋な決算対策として生命保険を活用する方法です。節税商品としての「保険商品」は加入するだけで利益繰り延べが可能ですので、後は解約のタイミング(資金化)を考慮のうえ、もっともコストパフォーマンスに優れた保険商品を選択して加入します。

3-3-2. 役員報酬・賞与の代替え商品として

役員報酬・賞与をキャッシュで受け取らず保険商品で積立てる方法です。ご存知のとおり、国は政策的に法人減税を打ち出していますが、その一方で高額所得者の課税は強化しています。課税所得で1,800万円を超えると50%(所得税40%・住民税10%)は税金で持っていかれる計算です。そのため役員報酬を上げても、思うように手残りは増えないのが実情です。

そこで、保険商品を活用するわけです。要は、役員報酬・賞与をキャッシュで受け取るのではなくて、その分を保険で積立てるというイメージです。こうすることで法人は少なくとも保険料の支払原資(役員賞与)の半分を経費化できます。

一方、役員本人はそこで積立てたキャッシュをいずれ自身で受け取る際、次の2つの税制メリットを享受できるオプションを手にできます。端的にいうと、キャッシュでもらうより手残りが増えるということです。

 一時所得

  1. 総合課税(他の所得と合算される)
  2. 50万円の非課税枠
  3. 2分の1課税

 退職所得

  1. 分離課税(他の所得と合算されない)
  2. 勤続年数に応じた非課税枠
  3. 2分の1課税

3-3-3. 役員退職金の積立原資として

節税を図りながら役員退職金の積立原資を確保する方法です。仮に現預金やその他の金融商品で退職金を積立てているのであれば、それは法人税納税後の純利益から積立てる形になります。よって、退職金原資を積み立てるために「税負担分」を余計に拠出しなければいけない計算になってしまいます。

一方、保険活用による役員退職金の確保は他の金融商品と比して圧倒的に優位です。節税を図りながら退職金原資を積み立てられるうえ、保障機能はもちろん、保険資産には「含み益」「含み損」があり、いざとなったら利益調整にも使えますし、退職金の受取時には「退職所得」という税制メリットを享受できるからです。(※分社化すれば2社で退職金を受け取ることも可能です)

まとめ

もちろん、ここでご紹介した節税対策については創業何十年のベテラン社長ならすでに導入済みでしょう。しかし、創業からそう何年も経ってない社長の場合は意外と知らない内容だったりします。法人営業で社長を相手にビジネスをする以上、ここで紹介した節税対策は最低限知っておきたい知識情報です。もしも知らない内容があったらご自身で勉強されることをおすすめします。




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神奈川県生。早稲田大学商学部卒業後、大手国内生保から外資系保険会社を経て、平成17年7月に営業支援会社「株式会社おまかせホットライン」を創業。創業以来一貫してダイレクトマーケティングを実践し、DM・FAXDM・WEB媒体を駆使した売らずに売れる「仕組み」の構築を得意とする。そのノウハウを公開する自社セミナーは毎回キャンセル待ちになるほど盛況を誇る。