融資を引き出す決算書の作り方~金融機関は決算書のどこを見ているのか?

融資を引き出す決算書の作り方~金融機関は決算書のどこを見ているのか?

法人営業において、社長の興味は次の3つです。

  1. 売上アップ
  2. 経費削減
  3. 資金調達(※業種による)

今回はこのうち「資金調達」をテーマにします。題して、【社長が喜ぶ!融資を引き出す決算書の作り方】です。ご存知の方もいるでしょうが、弊社は不動産賃貸業もやっています。その過程においてこの4年半で金融機関から大小13本もの融資を受けてきました。

  • 信金5本
  • 地銀2本
  • 政策公庫6本

1年に3本は融資を受けている計算です。正直、僕の会社なんてフーと吹けば飛んでいっちゃうくらいの「超」零細企業です。それでも年間3本のペースで「億」を超える融資を受けています。

なぜ、そんなことが可能なのか?
それは、毎期3つのポイントを押さえて、銀行ウケする「決算書」を作っているからです。もしあなたの周りに資金調達でお困りの社長がいたら、ここでご紹介するポイントを教えてあげてください。財務分析がどうの、キャッシュフローがどうの、なんて小難しい話はいたしません。

中小企業に融資する際、金融機関は「決算書のどの部分をチェックするのか?」「逆に、どうすれば融資してもらえるのか?」という点を簡略化して解説いたします。知識は力なり。社長と会っても話すことがない…。それなら法人営業では知っておいて「損」はない知識です。




決算書なんてどうでもいい会社もある(むしろ多い)

最初に身も蓋もない話をします。ほとんどの中小企業の社長が決算書なんてどうでもいいと思っています。理由は単純です。決算書の数字が悪くても事業に直接的な影響は出ないからです。

ご存知のとおり、「赤字」の企業は金融機関から融資を受けるのは難しくなります。しかし、世の中の7割の中小企業は「赤字」です。これって、どういうことか。つまり、ほとんどの中小企業では決算書の見栄えを気にしていないということです。実際、僕の会社もそうでした。不動産賃貸業を始める少し前までは、決算書はずっと「赤字」にしていましたが、何も困ることはありませんでした。それまでは仕入れも、設備投資も必要ないビジネスをやっていて、資金調達の必要性がなかったからです。

しかし、そうは言っていられない中小企業もあります。例えば、次のような業種です。こういう業種では決算書の数字が重要になってきます。数字が悪いと事業に直接的な影響が出るからです。

  •  仕入れや設備投資が必要な業種
  •  公共事業の受注などで財務状況が問われる業種

こういう業種にとって決算書の数字は死活問題です。いずれも金融機関からの資金調達ニーズの高い業種だからです。それゆえ、こういう業種では、ときには嘘をついて税金を多く払ってまで「決算書の数字を良く見せかける」という不可解な現象が起きたりします。それが“粉飾決算”です。

金融機関は決算書のどこを見ているのか?

金融機関がチェックする決算書のポイントを説明します。僕ら自営業者が融資を受けるには、何はともあれ、金融機関から“門前払いを食らわない決算書”にしておく必要があるからです。

以下、事業性融資の相談に行くと、どこの金融機関も必ずチェックするポイントです。

  • 損益計算書の「利益」
  • 貸借対照表の「純資産」
  • 借入金の「残高」

損益計算書の「利益」

まず最初に金融機関は「損益計算書」(P/L)の「利益」の内訳を見ます。損益計算書には次のような利益が表示されています。「売上総利益」はほとんどの会社で黒字なはずです。売上から原価を引いただけの数字だからです。ここから人件費や販促費等の経費を引いたのが「営業利益」です。つまり、本業利益です。ここから支払利息等を引いたのが「経常利益」です。「経常利益」が黒字だと支払利息を引いても利益が出ている状態ですから、金融機関からの評価は高くなります。

損益計算書(P/L)
    売上高 ×××××円
     売上原価 ×××××円
    売上総利益 ×××××円
     販売費及び一般管理費 ×××××円
    営業利益 ×××××円
     営業外収益 ×××××円
     営業外費用 ×××××円
    経常利益 ×××××円
     特別利益 ×××××円
     特別損失 ×××××円
    税引き前当期利益 ×××××円
    法人税等 ×××××円
    当期利益(純利益) ×××××円

この3つの利益を金融機関は重要視します。仮に「当期利益」が赤字であっても、「経常利益」までが黒字であれば、一過性の赤字で“実態黒字”と評価してくれる可能性がありますが、「営業利益」「経常利益」が赤字であれば、「当期利益」が黒字でも、一過性の黒字で“実態赤字”と評価される懸念があります。

さらに、金融機関は単年度だけチェックするわけではありません。通常は過去3年分、金融機関によっては過去5年分の利益をチェックします。今は黒字でも、それ以前が赤字なら評価はその分低くなります。逆に、連続して黒字だと金融機関の評価が高くなります。

貸借対照表の「純資産」

次に、金融機関は「貸借対照表」(B/S)の「純資産」を見ます。純資産とは貸借対照表の資産から負債を引いた残りです。「債務超過」や「累積損失」をチェックします。純資産がマイナスなら債務超過です。そうなれば破綻懸念先となり、まず融資は受けられません。累積損失も評価が低くなります。累計損失の計上は創業から現在までの利益合計がマイナスという意味だからです。早々に解消しておく必要があります。

融資を引き出す決算書の作り方~金融機関は決算書のどこを見ているのか?

金融機関が資産を評価する場合は「それをいくらで購入したのか?」では見てくれません。金融機関が独自に算出した評価額と負債額で判断されることになります。そのうえで、こうなっている必要があります。

(金融機関による)資産評価額 - 負債額 = 純資産がプラスの状態

借入金の「残高」

金融機関は借入金の「残高」も必ずチェックします。金融機関に事業性融資の相談に行くと、他行も含めた現在の「借入金返済明細表」を提出するように指示されます。次の公式でその会社の返済余力を見るためです。実際、どこの金融機関も融資先には以下の決算書を期待しています。僕の場合ですと、年間借入金返済額が相当な金額になっているので、以下の公式をクリアするため毎年イヤイヤ法人税を納めています。それもこれも不動産賃貸事業を今後も拡大したいからです。

営業利益 + 減価償却費 > 年間借入金返済額

まとめ

このことから僕らのような自営業者が金融機関から融資を受けるためには、節税もホドホドにして計画的に“金融機関ウケする決算書”に仕上げておく必要があります。まずは「損益計算書」(P/L)の「売上総利益」「営業利益」「経常利益」を黒字にする。それが過去3年分で実現できればベストです。

次に、「貸借対照表」(B/S)の「純資産」を増やす。当然、「当座比率」(現預金の割合)も増やした方が融資審査に有利に働きます。累積損失や役員貸付金は早期に解消しておきましょう。マイナス材料になります。融資のテーブルに乗るには、ここがスタート地点になります。

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神奈川県生。早稲田大学商学部卒業後、大手国内生保から外資系保険会社を経て、平成17年7月に営業支援会社「株式会社おまかせホットライン」を創業。創業以来一貫してダイレクトマーケティングを実践し、DM・FAXDM・WEB媒体を駆使した売らずに売れる「仕組み」の構築を得意とする。そのノウハウを公開する自社セミナーは毎回キャンセル待ちになるほど盛況を誇る。