新規開拓のコツ~なぜターゲットを絞り込むと集客数を最大化できるのか?

新規開拓のコツ~なぜターゲットを絞り込むと集客数を最大化できるのか?

多くの営業マンがターゲットを絞り込まず、より多くの見込客を獲得しようと可能性のあるすべてのターゲットを新規開拓しようとします。ターゲットを絞り込むと、見込客が少なくなってしまうと考えるからでしょう。しかし、事実は逆です。ターゲットを絞り込むことで、より多くの見込客を獲得できるのです。

その理屈は簡単です。例えば、大勢の人が行き交う渋谷のスクランブル交差点で「赤い帽子」を被った人を呼び止めたいとします。このとき次のどちらの呼びかけに赤い帽子を被った人は「振り向いてくれるでしょうか?」という話と同じだからです。

呼びかけA


そこのあなた

呼びかけB


そこの赤い帽子を被ったあなた




なぜターゲットを絞り込むのか?

ビジネスは誰かの悩みや問題を解決するために存在します。しかし、万人向けの商品・サービスはありません。どのような商品・サービスであっても解決できるのは“特定の誰か”の悩みや問題だけなのです。にもかかわらず、ターゲットを絞り込まずにいる。それは“特定の誰か”を振り向かせることができないばかりか時間とコストの大きなムダも生み出します。

例えば、全国には約419万社の中小企業あります。しかし、その約419万社が同じ悩みや問題を抱えていることはありえない話です。業種、規模、エリアなどがそれぞれまるで違うからです。

このような状況で「全国の中小企業の社長様」とダイレクトメールを送っても期待したレスポンスは得られないことはお分かりでしょう。約419万社となると、コスト面でもまず無理です。

それよりも同業種、同程度の規模、同一エリアの中小企業だけに「従業員**名以下の**業の社長様」とダイレクトメールを送った方がレスポンスを期待できることは容易にイメージできるのではないでしょうか。限られたコストも有効に使えます。まとめると、以下4つの理由からアプローチ可能な特定の問題を抱える“誰か”だけを探す必要があるからです。

  • 理由#1 ビジネスは誰かの問題を解決するために存在する
  • 理由#2 その誰かとは“誰でもいい誰か”ではない
  • 理由#3 万人の問題を解決できる商品・サービスはない
  • 理由#4 物理的にアプローチできる範囲も制限がある

3.35%もの注文率の違いが生まれた事例

とはいえ、これまでターゲットを絞り込んでこなかった方には理屈は分かっても納得はしにくいかもしれません。そこで、弊社の販促プロモーションの事例をもとに【ターゲットの絞り込みと成果の相関関係】をご紹介します。以前、弊社では2種類のダイレクトメールを生命保険代理店宛てに発送しました。

(キャッチコピーを変えた2種類の変形ハガキDM)

形状はA4版の変形ハガキで内容は書籍(拙著)を販売するためのものでした。販売価格は1,680円と低かったので、「売り切り型」とし、ターゲットの生命保険代理店はタウンページをリスト化してメール便で全国に一斉送付しました。

ダイレクトメールの送付件数は合計2,939通。結果は注文数が296件で、売上金額は約50万円、実に申込率で10.07%もの高反応でした。

ここからが本題です。実は、このとき“あるテスト”を行っていました。合計2,939通のリストを2つに分けてそれぞれの結果を計測していたのです。1つはアフラック代理店のリスト(A)。もう1つはそれ以外の生命保険代理店のリスト(B)です。タウンページをリスト化するときにあらかじめセグメントしておきました。そうしてダイレクトメールの「キャッチコピー」だけを変えたものをそれぞれ送るようにしたのです。

テストはアフラック代理店のリスト(A)のキャッチコピーを「現役のアフラック代理店」、それ以外の生命保険代理店のリスト(B)のキャッチコピーを「現役の生命保険代理店」としました。その結果は以下のとおりです。ご覧のとおり、両者には注文率にして3.35%もの違いが生まれました。

内訳 アフラック代理店のリスト(A) それ以外の生命保険代理店のリスト(B)
リスト  987件  1,952件
注文数  121件  175件
注文率  12.25%  8.9%

なぜこのような差が生じたのかというと、それはダイレクトメールのキャッチコピーで同業種のターゲットを“さらに”絞り込んだからです。だから生命保険代理店の中でも、とりわけアフラック代理店の反応が勝っていたわけです。このことからターゲットを絞り込めば絞り込むほど見込客のレスポンスは高くなることがお分かりいただけるのではないでしょうか。

ターゲッティング2つの選定基準と3つの決定方法

ターゲットの選択基準は2つです。ひとつは「アプローチは容易か?」という基準。企業規模が大きすぎて決定権者に会えない。ニッチすぎて営業リストが手に入らない。いずれも新規開拓では致命的です。ターゲッティングの目的は集客数を最大化するためです。アプローチが容易なターゲットを選定しましょう。

もうひとつは「母数は十分か?」という基準です。ターゲットの母数が少なければおのずと見込客数も少なくなります。ある程度の母数を確保できるターゲットを選定するようしましょう。iタウンページで業種やエリアを設定すればおよその母数がイメージできます。それを一つの目安とするのもおすすめです。

  • 基準#1 アプローチは容易か?
  • 基準#2 母数は十分か?

この2つの選択基準に照らし合わせて、次の3つの方法でターゲットを絞り込んでいきます。さらに、この3つを組み合わせることでターゲッティングの精度は上がっていきます。

以下、それぞれ解説を加えていきましょう。

方法#1|エリアで絞り込む

これは多くの営業マンが採り入れている方法でしょう。対面セールスが必要な法人営業ではおのずと活動エリアに制限ができてしまうからです。エリアでターゲットを絞り込むメリットは移動に関して時間とコストを節約できる点にあります。この方法では競合が弱いエリアを選ぶようにして、同一エリアを徹底して攻略していくのが1つのポイントです。そうすればやがては「地域No.1」という強力な宣伝文句を手に入れることができるからです。

方法#2|業種で絞り込む

総務省の日本標準産業分類iタウンページで分類されている業種別にターゲットを絞り込む方法です。誰もが「その道のプロ」から商品・サービスを購入したいと考えます。ターゲット業種を絞り込めば、その業種の情報がおのずと集積されて専門特化の近道になります。同業他社との差別化も図れるようになります。1つの業種で成功すれば他業種に水平展開してさらに新規開拓の幅を広げることもできるでしょう。

方法#3|共通項で絞り込む

ターゲットの共通項で絞り込む方法です。もっともポピュラーなのは「新設法人」でしょう。他にも、従業員数10名以下、創業5年以内、業界団体の会員など絞り込みにはいろいろあります。ちなみに、求人紙に広告を掲載すると今度は別の求人媒体の会社からダイレクトメールが送られて来ます。同様にその求人誌に広告した企業には一斉に送付されているはずです。これは「求人広告の掲載企業」という共通項でターゲッティングしているからです。

ターゲットが決まったらすぐに取り組むべき重要事項

率直にいうと、ターゲットを決めるだけなら簡単です。「よし、明日から**業界をターゲットにしよう」と自分で勝手に決めてアプローチすればいいだけだからです。しかし、現実はそれだけで新規開拓が成功するほど甘くはありません。新規開拓で見込客から“手を挙げてもらう”には「あなたなら自分の悩みや問題を解決してくれるかも…」と見込客に思わせないといけないからです。

そう思わせる近道は1つ。【スペシャリスト】になることです。スペシャリストとは、

「見込客の悩みや問題を理解していて具体的な解決策を提示できる専門家」

のことをいいます。重要なのは「自分は誰の、どんな悩みや問題を解決できるのか?」という【答え】を導き出す努力を続けることです。自分自身に置き換えて考えてみましょう。

あなたなら「私は御社の業界について何も知りませんし、御社の抱える悩みや問題も分かりません」という営業マンから商品・サービスを買いたいと思うでしょうか。思わないはずです。ゆえに、あなた自身も見込客からそう思われないようにスペシャリストになる必要があるのです。

以下、今日から実践できて、誰でもスペシャリストになれる3つの方法をご紹介します。

方法#1|関連書籍を最低2~3冊は読む

例えば、あなたが歯科医院をターゲットにしているとします。ならば、「歯科医院」とAmazonで検索してみてください。すると、歯科医院に関する関連書籍がヒットするはずです。いずれも歯科医院を経営するドクター向けに書かれた書籍です。

このような書籍を2~3冊読むだけで業界知識、業界特有の悩みや問題点、業界特有の言い回し(例えば歯科医院では「集客」を「集患」と呼ぶ)などターゲットに関する情報をかなり吸収できます。また、書籍を読み進めるうちに、おのずと新規開拓やセールスに関するアイデアやヒントももらえるはずです。

方法#2|業界コンサルタントのHP、ブログ、メルマガをチェックする

例えば、歯科医院なら歯科医院専門のコンサルタントがいます。コンサルタントは問題解決を仕事にしています。よって、こうしたコンサルタントのHP、ブログ、メルマガをチェックすればターゲット業界の悩みや問題を素早く知る手掛かりになります。また、売っている商品・サービスは違ってもターゲットは同じです。異業種は「どのような方法でターゲットに商品・サービスをセールスしているのか?」を知ることもできはずです。同業他社の成功事例をパクれば単なる「猿マネ」ですが、異業種の成功事例を転用すれば「ブレイクスルー」になるかもしれません。

方法#3|業界セミナーに参加する

セミナーは全国いたるところで毎日開催されています。そこで、ターゲットを対象にしたセミナーに参加するのです。例えば、あなたが歯科医院をターゲットにしているなら「歯科ドクター向けの経営セミナー」などがそうです。「ターゲット(業種・業界)+セミナー」でネット検索すれば現在開催中のセミナーが見つかるはずです。その中であなたが知りたい内容で参加可能なセミナーにエントリーします。この方法のメリットは2つです。ひとつは方法#1、方法#2の文字情報と比べて一度に大量の情報を吸収できる点。もうひとつは参加者は将来あなたの見込客になってくれるかもしれない点です。

まとめ

以上、法人営業におけるターゲットの絞り込みの重要性について事例を交えながら解説いたしました。誰にとっても経営資源は限られています。その限られた経営資源を効率的に配分するにはターゲットの絞り込みが不可欠です。とかくターゲットを絞り込むことで、「他の見込客を切り捨てることになるのでは?」と考えがちですが、“二兎を追う者は一兎をも得ず”です。ぜひ今回の記事を参考にあなたのターゲットを明確にしておきましょう。

 step.01 白地客を「見込客」に変える




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神奈川県生。早稲田大学商学部卒業後、大手国内生保から外資系保険会社を経て、平成17年7月に営業支援会社「株式会社おまかせホットライン」を創業。創業以来一貫してダイレクトマーケティングを実践し、DM・FAXDM・WEB媒体を駆使した売らずに売れる「仕組み」の構築を得意とする。そのノウハウを公開する自社セミナーは毎回キャンセル待ちになるほど盛況を誇る。